イベント情報

2020.04.23シェイクスピア祭

2020年度シェイクスピア祭 川地美子先生 ご講演音声掲載のお知らせ

2020年4月25日に予定しておりましたシェイクスピア祭は中止になりましたが、ご講演を頂く予定でした川地美子先生にご講演を録音して頂きましたので、お届け致します。

2020年度 シェイクスピア祭

日本シェイクスピア協会主催

会長よりの挨拶  今年度はシェイクスピア祭を開催することができませんでしたが、その代わりとしまして、予定しておりましたご講演とリーディング公演を音声でお届けすることになりました。川地美子先生にご講演を吹き込んで頂き、その準備ができましたので、下記の案内に従ってお聴きください。「リア王」リーディング公演につきましてはZOOMによる稽古・収録がすでに開始されております。皆様のお耳に届くまで今しばらくお待ちください。  シェイクスピアはその生涯で3度、パンデミックを経験しています。最初は1563~64年のペストの流行で、ロンドンではこのとき2万人以上の死者が出たとされています。シェイクスピアの生まれた田舎に感染の波がやってきたのは64年7月、シェイクスピアが生後3か月のときでした。このときストラットフォード・アポン・エイヴォンでは町の全住民の一割以上にあたる237名が半年で死亡しました。シェイクスピアがこのあとロンドンを執拗に襲った疫病に感染しなかったのは、このとき免疫ができたのではないかという説さえあります。2度目は1593~95年にロンドンを襲った爆発的疫病の流行。この頃シェイクスピアが書いた『ロミオとジュリエット』で、「ジュリエットは本当は死んだのではなく仮死になる薬を飲んだのだ」という重要な情報を伝える手紙がロミオに届かなかったのは、それを伝えるはずのジョン修道士が「この町の病人を見舞っていたのを見つけた折も折、町の検疫官たちに、我々二人がいた家は、伝染病に冒されていると嫌疑をかけられ、戸を封鎖され、閉じ込められてしま」ったからです。このことの意味合いを私たちは身につまされて知ることになりました。そして、3度目は、1603年の驚異的なパンデミック。20万人いたロンドンの人口のうち、3万人が死に、3万人以上が感染に苦しんだとされます。この影響は1606年まで長引き、暗い問題劇が書かれたのみならず、『マクベス』や『リア王』にも大きな影を落としています。その詳細はジェイムズ・シャピロ著『1606年~リア王の時代』に記されています。このとき(感染者ではなく)死者が週30人を超えたら劇場閉鎖になったとされています。私たちは情報として知っていたはずのこの事実の意味を、今こそ噛み締めなければならないでしょう。何か月にもわたって劇場閉鎖が続いても、それでもシェイクスピアは劇を書き続けました。活動ができなくなっても、それでもシェイクスピアの脳は、ペンは止まることはなかったのです。  私たちの時代の学者と俳優たちの声を通して、シェイクスピアの理知をお聴きください。

日本シェイクスピア協会会長 河合祥一郎

ご講演: 川地 美子氏(元杏林大学教授)

講演題目:「シェイクスピア―国民的詩人からグローバル・アイコンへ 」

講演要旨:シェイクスピアは、生誕から456年後の今もなお、英国の国民的詩人・劇作家としてだけでなく、グローバル・アイコンとして生き続けている。これは作品が翻訳、翻案、上演等により異文化圏へ伝播したからでもあるが、なぜ彼が存続し得るのかという、簡単には答えられそうもない問題を、私なりに考えてみたい。また舞台の東洋化が彼のグローバル化に、どのように寄与するのかについても言及できればと思う。

川地 美子(かわち よしこ)氏

津田塾大学学芸学部英文学科卒業(1959)、慶応義塾大学大学院文学研究科英文学専攻修士課程修了(1969)、ニューヨーク市立大学大学院博士課程留学(1975-1976)、共立女子短期大学専任講師、助教授(1969-1987)、杏林大学教授(1988-2005)・大学院教授(1993-2005)。 学位:慶応義塾大学博士(文学)、招待会員:バーミンガム大学とシェイクスピア・インスティテュートによる国際シェイクスピア学会(1981-)。 著書:Calendar of English Renaissance Drama 1558ー1642 (Garland, 1986)、『シェイクスピアと文化交流』(成美堂、1995)、『シェイクスピアの時間論』(同、1998)、『シェイクスピアの世界』(同、2007)、『世界を旅するシェイクスピア』(中央公論事業出版、2018)、編訳:『古典的シェイクスピア論叢』(みすず書房、1994)。 編著:Japanese Studies in Shakespeare and His Contemporaries (Delaware UP, 1998)、共編著:『シェイクスピア批評の現在』(研究社、1993)、近年の主要論文:“Rewriting Shakespeare in a Japanese Context for the Page and the Stage” in Shakespeare’s World/World Shakespeares (Delaware UP, 2008)、 “Shakespeare’s Long Journey to Japan” in Shakespeare’s Asian Journeys (Routledge, 2017)、そのほか翻訳に加えて、Shakespeare Worldwide (Yushodo, 1986-1995)の編集、Multicultural Shakespeare ( Łódź UP, 2004-)の共同編集、World Shakespeare Congress (1986)のシェイクスピア翻訳会議 の議長、国際学会の基調講演等。

川地美子先生 ご著書『世界を旅するシェイクスピア』
(中央公論事業出版、2018年)